ウミガメのスープ問題20選|簡単・難問のオリジナル良問
ウミガメのスープ問題を20問、有名問題を使わず完全オリジナルで創作した問題集。やさしい問題から面白い歯ごたえの問題、怖い雰囲気の難問まで3段階に分け、出題者用の質問例と答えもすべて掲載。回答者の質問を「状況を削る」→「動機を当てる」の2段階に分ける進め方も解説する。
「はい」「いいえ」だけで真相にたどり着く水平思考クイズ
出題者が短い状況だけを読み上げ、残りの参加者は「はい」「いいえ」で答えられる質問だけを重ねて、ひとつの真相を探り当てる。ウミガメのスープは、この遊びに付けられた通称で、由来はポール・スローンの著書にあるとされる。水平思考クイズと呼ばれることもある。
道具は一切いらない。出題者の頭の中に問題文と答えさえ入っていれば、居酒屋のテーブルでも、長電話の合間でも、渋滞にはまった車の中でも成立する。電話越しでも問題なく進行できるので、長電話の沈黙が気まずいときは通話で盛り上がる話題とゲームで扱っている他の遊びと組み合わせてもいい。
この遊びは、正解を言い当てる瞬間そのものより、そこへ向かう質問のやり取りに時間の大半を使う。行き当たりばったりに質問を重ねると、核心にたどり着けないまま時間だけが過ぎていく。質問の順序を意識できる人がひとりいるだけで、同じ問題でも真相にたどり着く早さは大きく変わる。
ルールと進め方
出題者が答えられるのは「はい」「いいえ」「関係ありません」の3種類だけだ。質問の内容が問題の核心に関わらない場合や、出題者自身も答えを持ち合わせていない場合は「関係ありません」を使う。逆に、質問が的を射ているのに「いいえ」と答えてしまうと、参加者を誤った方向に導いてしまうので、判断に迷ったときほどこの3択の使い分けが重要になる。
回答者が使える質問の数に制限はない。時間をかけて何十個でも質問を重ねてよく、その代わり一問一答ではなく、じわじわと状況を絞り込んでいく進行になる。出題者が答えを1人で握ったまま進行する遊びは他にもあり、10回クイズ60問も出題者ひとりがテンポを作る形式になっている。
参加者の質問が完全に止まってしまったときは、出題者からヒントを出す。ヒントの出し方は、答えそのものを明かすのではなく、それまでに出た質問の中から「まだ聞かれていない角度」を示すのがコツだ。たとえば場所についての質問がひとつも出ていなければ、「場所を聞いてみるといいかもしれない」と水を向けるだけで、止まっていた質問が再び動き出す。
水平思考クイズの原典『ポール・スローンのウミガメのスープ』シリーズや問題集の本。出題のネタ切れをまとめて解消できる。
質問には2段階ある
回答者の質問がうまく噛み合わないとき、その多くは「状況を削る質問」と「動機を当てる質問」を区別せずに使っていることが原因になっている。ウミガメのスープの質問は、大きく分けるとこの2段階に分かれる。
第1段階は、状況を削る質問だ。「いつ」「どこで」「誰が」「その物は関係あるか」といった、問題文に書かれた場面の輪郭をはっきりさせる質問がこれにあたる。第1段階が終わっていない段階では、登場人物が何人いるのか、屋内か屋外か、日中か夜かといった基本情報すらあいまいなままになっている。
第2段階は、動機を当てる質問だ。「なぜそうしたのか」「誰のためにやったのか」という、行動の理由そのものに踏み込む質問になる。第2段階の質問は、第1段階で状況が絞り込まれていて初めて的を絞りやすくなる。
第1段階を飛ばして、いきなり動機を聞く質問ばかりを重ねると、回答者は迷宮入りしやすい。たとえば「男はカフェでコーヒーを2つ注文したが、片方には一度も口をつけなかった」という状況が出されたとする。ここでいきなり「誰かのために買ったのですか」「待ち合わせをしていたのですか」と動機を聞く質問を重ねても、出題者の答えは「いいえ」ばかりが続き、手がかりが増えない。
先に「毎日同じ時間に来店しますか」「注文の仕方はいつも同じですか」「店員と何か決まったやり取りがありますか」という状況を削る質問を重ねると、「毎日」「決まったやり取りがある」という輪郭が見えてくる。そこまで絞り込んでから「その2杯目は、別の誰かが飲むためのものですか」と動機に踏み込むと、ようやく核心に届く。この男は、毎日2杯目のコーヒーを頼み、会計のときに「次に来た、ひとりのお客さんに」と店員に頼んで、名乗らないまま置いていく習慣を続けていた——という具合に、状況が絞られたあとの動機の質問は、驚くほど早く正解にたどり着く。
出題者の側も、この2段階を意識しておくとヒントの出しどころが分かりやすくなる。状況を削る質問がまだ出そろっていないのに動機ばかり聞かれている場合は、状況の質問に水を向けるヒントを出す。逆に状況はほぼ固まっているのに動機の質問が出てこない場合は、「そろそろ理由を聞いてみては」と促すだけで、止まっていた進行が動き出す。
やさしい問題|初めてでも5分で当てられる8問
シンプルな身の回りの出来事だけで完結する8問。ウミガメのスープを初めて出題するときは、まずこのあたりから始めると、答える側もルールをつかみやすい。
1. 三つの目覚まし時計
花子は家電量販店で、同じ機種の目覚まし時計を3台同時に購入した。3台とも壊れているわけではない。花子は一人暮らしで、寝室は6畳ひと間しかない。会計中、理由を尋ねた店員に、花子は笑うだけで答えなかった。
質問例
- 3台を同時に鳴らして起きるのですか? → いいえ
- 花子さんは、時期によって起きる時刻が変わる仕事ですか? → はい
- 時計を買った店に理由がありますか? → 関係ありません
答え
花子が働く工場は三交代制で、担当する班が週ごとに入れ替わるため、起きなければならない時刻も4時・12時・20時と週単位で変わる。花子が長年使っているのは、つまみを回してベルの時刻を合わせるだけの、アラームを1つしか設定できない昔ながらの機種だった。寝ぼけたまま設定を変えていて合わせ間違え、一度大きな遅刻をしてからは、時刻を触ること自体をやめたいと考えるようになった。スマホのアラームに替えることも考えたが、枕元に置くと眠る前につい画面を見てしまうので、寝室には持ち込まないと決めている。そこで同じ機種を3台そろえ、それぞれ4時・12時・20時に合わせたまま固定して、その週に使う1台だけスイッチを入れて枕元に置き、残りは押し入れにしまっている。機種を揃えたのは、寝ぼけていても同じ手つきでスイッチを扱えるようにするためで、6畳ひと間の部屋に3台を並べて置いているわけではない。店員に答えなかったのは、遅刻したときの話まで持ち出さないと説明できなかったからだった。
2. 音を立てない会議室
入社してまだ数日という朝、新人のAは始業前に、大会議室の壁時計を2つとも止めた。あとで気づいた上司はAを注意しかけたが、話を聞くと、逆に礼を言った。
質問例
- 時計が壊れていたから止めたのですか? → いいえ
- 会議中に、時間を気にさせないようにするためですか? → いいえ
- その日、その会議室で特別な予定がありましたか? → はい
答え
その日の午後、会議室では取引先を招いた重要なプレゼンが予定されていた。壁時計は秒針の音が大きいタイプで、静かな会議室では意外なほどよく響く。Aは前の職場で、同じ種類の時計の秒針の音がプレゼン中に気になったという話を聞いていたのを思い出し、念のため大会議室の時計を2つとも止めておいた。上司はその日の予定の重要性を知っていたので、Aの気配りに気づいて礼を言った。
3. 晴れた日の傘
小学5年生の太一は、天気予報が「晴れ」の日だけ傘を差して登校する。雨の日は必ずフード付きのレインコートを着て、傘は使わない。友達にからかわれても、太一は説明しなかった。
質問例
- 傘は雨をよけるために使っているのですか? → いいえ
- 太一くんは日差しから体を守る必要があるのですか? → はい
- 雨の日は肌を守らなくていいのですか? → いいえ
答え
太一は生まれつき日光に当たると湿疹が出る体質で、医師から肌をなるべく露出させないよう言われていた。ふだんから長袖と帽子で通しているが、それでも顔まわりだけはどうしても隠しきれない。雨の日のレインコートはフードが顔まわりまで覆ってくれるので、傘を足す必要がない。晴れの日はそのフードがない分、傘を差して顔ごと日陰に入れ、直射日光から肌を守っていた。太一にとって傘とレインコートは、どちらも同じ役割の道具だった。友達に説明しなかったのは、体質の話を持ち出すと決まって大げさに心配されるのが、太一には面倒だったからだ。
4. 十回借りた絵本
会社員の恵子は、図書館で同じ絵本を毎週欠かさず借り直している。借りるたびに息子へ読み聞かせているのに、10回以上借りた今も、その絵本を最後のページまで読んだことが一度もない。
質問例
- 息子さんは途中で読み聞かせを嫌がるのですか? → いいえ
- 読み聞かせが終わる場面は、毎回同じですか? → はい
- 恵子さんは、その絵本を買って家に置くことができないのですか? → はい
答え
恵子の息子は、この絵本の読み聞かせを毎晩楽しみにしている。ところが決まって物語の中ほど、主人公が眠りにつく場面まで来ると、息子もそのまま寝入ってしまう。恵子はそこで本を閉じるので、10回以上借りても最後のページにたどり着いたことがない。買って家に置けば済む話だが、この絵本は何十年も前に出た版で、今は図書館の閉架にしか残っておらず、書店にはなく、古書の市場にも長いこと出ていない。この図書館では絵本の貸出期間が1週間と短いため、恵子は毎週カウンターで請求票を書き、同じ一冊を借り直している。
5. かごを持たない買い物客
大学生の悠人は、スーパーで買い物をするとき、入口に積んである買い物かごを一度も持たない。いつも商品を両手で抱えたままレジへ向かう。落として困るようなものは買っていない。
質問例
- かごが汚れているのを気にしているのですか? → いいえ
- 悠人さんは、自分が買う量を制限したいのですか? → はい
- 悠人さんが買っているものの種類は関係ありますか? → 関係ありません
答え
悠人は一人暮らしを始めたばかりで、食費を月にいくらまでと決めていた。ところがかごを持って店内を回ると、目についた菓子や飲み物をつい放り込んでしまい、レジで予算を超える月が続いた。両手で抱えられる分しか持てない状態にしておけば、それ以上は物理的に買えなくなる。かごを使わないのは意志の弱さを認めたうえで、店の道具の使い方だけで自分に上限をかけるという、悠人なりの決まりごとだった。
6. いちばん遅いレジ
主婦の由美は、混雑しているときでも、必ず一番並んでいる人数が多く、動きも遅いレジを選ぶ。他のレジがすぐ空いても、由美は列を移動しない。
質問例
- 由美さんは値引きやポイントを狙っているのですか? → いいえ
- そのレジに立っている人に理由がありますか? → はい
- レジの場所や設備は関係ありますか? → 関係ありません
答え
由美がいつも選ぶレジには、動きはゆっくりだが、会計をしながら客に一言二言、温かい言葉をかけてくれる年配の店員が立っていた。由美はその店員の話し方が、遠方に住んでいてなかなか会えない祖母によく似ていると感じており、待ち時間の長さよりも、その短い会話の時間を楽しみにしていた。急いでいるときも列を変えないのは、多少待ってでもその時間を大事にしたかったからだった。
7. 日替わりの散歩コース
会社員の大輔は、飼い犬の散歩コースを毎日変えている。同じ道を2日続けて歩くことは一度もない。犬のほうは決まった道を歩きたがるので、大輔は毎日、いやがる犬を引っぱって別の道へ向かわせている。
質問例
- 大輔さんが同じ景色に飽きているのですか? → いいえ
- 過去に犬が行方不明になったことがありますか? → はい
- 散歩に出る時間帯は関係ありますか? → 関係ありません
答え
大輔の犬は以前、散歩中にリードが外れて2日間行方が分からなくなったことがある。見つかったのは、犬がたまたま歩き慣れた道に迷い込み、そこから自力で家の近くまで戻ってきたからだった。それ以来、大輔は同じことが起きても犬が自分で帰り道を見つけられるように、毎日コースを変えながら家の周りの道をまんべんなく歩かせて、どの道からでも帰れるように地理を覚えさせている。同じ道は数日おきに必ず巡ってくるので、犬にとっては繰り返しの練習にもなっている。犬の好きないつもの道に付き合っていては、その一本から外れた瞬間に帰れなくなってしまう。いやがるのを引っぱってでもコースを変えるのは、次に同じことが起きたときのための備えだった。
8. 十年間、同じ本
恭子は親友の誕生日に、10年間ずっと同じタイトルの本を贈り続けている。すでに友人の本棚には同じ本が10冊並んでいるが、友人は毎年喜んで受け取る。
質問例
- その本は物語ですか? → いいえ
- 友人はその本を1年で使い切ってしまうのですか? → はい
- 本を買う店や値段は関係ありますか? → 関係ありません
答え
恭子が贈っているのは物語の本ではなく、1日1行だけ日記を書き込める「1年日記」というノート形式の本だった。1冊で1年分しか書けないため、使い切ると新しいものが必要になる。友人はその日記を10年間毎日欠かさず書き続けており、恭子は誕生日のたびに次の1年分を贈っていた。本棚に並ぶ10冊はタイトルこそ同じだが、中身はそれぞれ違う年の記録で埋まっている。
歯ごたえのある問題|一段深く読む8問
状況を1つ2つ質問しただけでは終わらない、もう一段深く考える8問。第1段階の質問で状況を絞り込んでから、動機に踏み込んでいくと見えてくる。
9. 深夜のコンビニのレシート
サラリーマンの誠は毎晩、退社したあと会社のすぐ隣のコンビニでガムを1つだけ買う。買ったガムはその場でゴミ箱に捨ててしまうのに、レシートだけは財布にしまって帰る。
質問例
- ガムそのものが目的ですか? → いいえ
- レシートに印字されている内容が目的ですか? → はい
- 誠さんが買う商品の種類は関係ありますか? → 関係ありません
答え
誠の会社では退勤の打刻が形骸化しており、実際より早い時刻で記録が残されていた。誠は未払いの残業代を申し立てるつもりでいて、会社を出た直後に隣のコンビニで買い物をし、店名と日時が印字されたレシートを毎晩ためている。レシートは、その時刻に自分が会社の隣にいたことの記録になる。買ったガムをすぐ捨てるのは、必要なのが商品ではなくレシートだけで、店に置いてあるいちばん安いものを選んだ結果にすぎないからだった。
10. 空けておく二席
カウンター10席だけの小さなラーメン店では、外に行列ができている日でも、店主が2席に「予約席」の札を置いて誰も座らせない。この店は予約を受け付けていない。
質問例
- その2席は壊れていて座れないのですか? → いいえ
- 予約の客が来る予定があるのですか? → いいえ
- 店主は一人で店を回しているのですか? → はい
答え
店主はこの店を一人で回していて、麺をゆで、丼を仕上げ、会計までこなしている。10席をすべて埋めてしまうと、同時にゆでる麺の数が店主の手に余り、あとから仕上げる丼ほど麺がのびた状態で出すことになる。8杯までが、この店主が味を落とさずに回せる上限だった。だから席をふたつ空けて、何番目に座った客にも同じ一杯を出せる数に絞っている。予約席の札を置いているのは、空いているのになぜ座らせないのかと聞かれるたびに、この理屈を説明せずに済ませるための方便だった。
11. わざと外す一投目
常連客の浩二は、ボウリング場で毎回、1投目に必ず一番端のピン1本だけを狙って投げる。腕前は上級者なのに、初球でストライクを狙ったことが一度もない。
質問例
- 浩二さんはストライクを取る腕がないのですか? → いいえ
- 1投目のスコアそのものを気にしていますか? → いいえ
- 浩二さんは、その日のレーンについて何かを確かめていますか? → はい
答え
ボウリングのレーンには油が塗られており、その日の量や広がり方によってボールの曲がり方が変わる。中央のポケットを狙う投げ方では、多少ずれてもボールがピンに当たってしまうので、実際にどれだけ曲がったのかが分かりにくい。そこで浩二は毎回、同じ立ち位置から同じ球速で一番端のピン1本だけを狙って投げ、その1本に当たるか外れるかだけで、その日のレーンの曲がり具合を測っている。1投目は点数を取るための球ではなく、2投目以降に狙うコースを逆算するための1球だった。
12. 音を消したテレビ
駅前の喫茶店では、店内のテレビが開店から閉店までついているが、音は一度も出ない。字幕も表示していない。店に音楽は流れておらず、聞こえるのは食器の音くらいだ。客に頼まれたわけではなく、マスターが毎朝そうしている。
質問例
- テレビが壊れていて音が出ないのですか? → いいえ
- マスターは番組の中身そのものに関心がありますか? → いいえ
- 音を消していることは、客との会話に関係がありますか? → はい
答え
この店に来るのは一人客が多く、その大半がカウンターに座る。マスターは、そこで交わす短い会話こそがこの店の値打ちだと考えていた。テレビの音が出ていると、客は番組の中身のほうに耳を傾けてしまい、そこへ話しかければ邪魔をすることになる。音を消しておけば、画面に何が映ったかだけが二人のあいだに残るので、天気予報でも野球の結果でも、目に入ったものを合図に会話を始められる。字幕を表示しないのも同じ理由で、文字が出ていると客はそれを読み始め、やはり顔を上げなくなるからだった。
13. 花びらが散った翌朝
清は毎年、桜が満開の時期には一度も公園に行かない。だが花びらがすべて散った翌朝、決まって一人で大きな布袋を持って公園を訪れる。清の家から公園までは歩いて3分しかない。
質問例
- 清さんは桜の花そのものに用があるのですか? → はい
- 枝に咲いている花では駄目なのですか? → はい
- 清さんの体の事情は関係ありますか? → 関係ありません
答え
清が欲しいのは、木を傷めずに手に入る「地面に落ちた花びら」だけだ。満開の時期に公園へ行っても、欲しいものはまだ枝の上にあり、しかも公園は花見客で埋まって、落ちたそばから花びらは踏まれてしまう。花がすべて散った翌朝なら、人出は嘘のように引き、夜のあいだに落ちた花びらが、まだ誰にも踏まれないまま地面に敷き詰められている。清はその一日だけを待って、歩いて3分の近さを頼りに朝いちばんで出かけ、大きな布袋いっぱいに拾い集める。集めた花びらは乾かして押し花のしおりにし、孫が中学に上がる春に渡すつもりで、3年前から少しずつためている。
14. 乗らずに並ぶ男
遊園地の職員は、開園と同時に絶叫マシンの列に並ぶ常連の男性に気づいている。彼はいつも一番乗りの位置につくが、係員がその日最初の1台を送り出す直前に、必ず後ろの人へ順番を譲って列を離れる。
質問例
- 男性は絶叫マシンが苦手なのですか? → いいえ
- 男性はこの遊園地で働いているのですか? → いいえ
- 男性は仕事のためにここへ来ているのですか? → はい
答え
男性はかつてこの乗り物の係員で、今は同じ系列の別の遊園地で新人研修を担当している。研修で教えるのは、最初の1台を送り出すまでの安全確認の手順と客への声かけだが、男性はそれを自分の記憶からではなく、待っている客の耳にどう届くかで確かめ直したいと考えていた。運営に頼んで柵の外から見学することもできるが、客に向けた声かけの間合いは、列に並んだ客の位置でしか分からない。だから開園と同時に一番乗りの位置につき、最初の1台へ向けた一連の声かけを客として聞き届けると、確かめたいものは終わるので、順番を後ろの人へ譲って列を離れる。研修の時期が近づくたびに通ってくるので、職員たちは彼の顔をすっかり覚えていた。
15. 隣の美容室が買う花
花屋の隣にある美容室の店主は、閉店直前になると必ず花屋に立ち寄り、売れ残りの花をまとめて買っていく。だが、その花を自分の店には一切飾らない。
質問例
- 店主は買った花を安く売り直しているのですか? → いいえ
- 花はどこかの施設に届けられるのですか? → はい
- 買っていく花の種類は決まっていますか? → 関係ありません
答え
美容室の店主は、自分の店を持つ前は花屋で働いていた。切り花は数日たてば売り物にならなくなり、そのたびにまとめて捨てるのが何よりつらかったという。店を開いてからは、隣の花屋が閉店前に抱えた売れ残りをまとめて買い取り、その足で近くの高齢者施設のロビーと食堂に届けている。買い取った花を自分の店に飾らないのは、それを飾ってしまえば新しい花を仕入れずに済ませることになり、隣の売上を減らしてしまうからで、店に飾る花のほうは毎朝きちんと定価で買っていた。
16. 玄関灯の三回点滅
一人暮らしの清子は、毎晩22時になると自宅の玄関灯を3回点滅させる。心配した近所の人が声をかけても、清子は「大丈夫、いつものことだから」と笑うだけだった。
質問例
- 清子さんは電気の故障を知らせているのですか? → いいえ
- 近所の人たちに向けた合図ですか? → いいえ
- 点滅の回数に意味がありますか? → はい
答え
清子の息子は、帰りの道順が決まった配送の仕事をしていて、毎晩22時きっかりに車で清子の家の前を通る。二人はその時刻に合わせて、玄関灯の点滅で近況を伝え合う取り決めをしていた。回数がそのまま合図になっていて、3回なら「変わりなし」、2回なら「明日電話がほしい」、1回なら「すぐ寄ってほしい」という意味になる。話すことがない日ほど、電話は互いに気を遣って長引いてしまう。3回が続いているあいだ、息子は何も言わずにそのまま通り過ぎればよかった。近所の人に説明しなかったのは、母と息子だけの取り決めを、わざわざ言葉にするほどのことでもないと思っていたからだった。
難問|大人同士でも唸る4問
状況を絞り込むだけでは足りず、思い込みを一度外して考え直す必要がある4問。このうち2問は夜の雰囲気を持つ問題だが、答えはどちらも穏やかな話に着地する。
17. 誰もいないオフィスのコピー機
深夜のオフィスを見回っていた警備員は、誰もいないはずのフロアで、コピー機が1枚、また1枚と紙を吐き出し続けているのを見つけた。人の姿はどこにもなく、廊下の電気も消えたままだった。そのコピー機はネットワークから切り離されていて、FAXの機能もない。
質問例
- コピー機が故障して紙を出しているのですか? → いいえ
- その印刷は、時刻を指定して予約されたものですか? → いいえ
- その印刷を最初に始めたのは、人ですか? → はい
答え
その夜、遅くまで残っていた経理の社員が、年度末の帳票を数百枚まとめて印刷にかけた。ところが、この古い機種には内部の温度が上がりすぎると冷めるまで印刷を止めて自分を守る保護機能があり、連続の大量印刷で百数十枚を残して停止した。社員は故障だと思い込み、翌朝いちばんで業者を呼ぶつもりで、そのまま帰ってしまった。機械は三十分ほどかけて冷え、止まっていた続きから残りを吐き出し始めた。警備員が見たのは、少し前にかけられたまま止まっていた印刷の、その再開だった。ネットワークにもFAXにもつながっていない機械が無人のフロアで動く——その種明かしを知っているのは、夕方のフロアにいた本人だけだった。
18. 廃校の理科室に灯る明かり
廃校になって3年が経つ小学校では、毎月決まって同じ金曜の夜だけ、誰もいないはずの理科室の窓に明かりがともる。明かりは2時間ほどともり続けてから、ふっと消える。校舎の電気は、廃校のときから止められている。
質問例
- 理科室の中に、人がいるのですか? → いいえ
- 明かりの正体は、理科室の照明ですか? → いいえ
- 学校の敷地の中に、人はいますか? → はい
答え
明かりの正体は、理科室の照明ではなく、窓ガラスに映り込んだ光だった。廃校のあと校舎の電気は止められたが、体育館だけは地域に開放されていて、月に一度の金曜の夜、地元のバドミントンサークルが借りて練習している。体育館の高い窓から漏れる照明の光が、渡り廊下をはさんで向かいに建つ理科室の窓ガラスへ、ちょうど映り込む角度になっている。離れた道から見上げると、それが理科室そのものに灯った明かりに見えた。金曜の夜だけなのは体育館の貸出日がその曜日だから、月に一度なのは月1回の定期利用だからで、体育館の明かりが消えると同時に、理科室の「明かり」も消える。
19. いつも同じゴールタイム
マラソン大会に毎回参加する隆は、コースも天候も違うのに、ゴールタイムがどの大会でもぴったり同じだった。しかもそのタイムは、隆が背中に掲げている目標時刻より、決まってきっかり3分早い。本人はいつも涼しい顔でゴールしている。
質問例
- 隆さんは自分の記録を伸ばそうとしているのですか? → いいえ
- 背中に掲げている目標時刻は、大会側から指定されたものですか? → はい
- 隆さんの後ろを走るランナーに関係がありますか? → はい
答え
隆はマラソン大会のペースメーカーというボランティアで、目標タイムを書いた風船を背負って走り、それを目印にするランナーを引っ張る役目を任されている。隆が担当するのは、完走を目指す層がいちばん厚い「4時間30分」の枠と決まっていて、どの大会に呼ばれても同じ枠を受け持つ。だから、コースや天候が変わっても、狙うゴールタイムそのものは毎回変わらない。掲げた時刻より3分早くゴールするのは、後ろについてきたランナーが終盤で多少ばらけても、目標時刻までに間に合うだけの余裕を残しておくためだ。ちょうどの時刻で入ってしまうと、少し遅れた人がそのまま目標を外してしまう。隆が涼しい顔をしていられるのは、自分の全力よりかなり遅いペースで走っているからだった。
20. 差出人のないリクエストはがき
深夜ラジオのパーソナリティのもとには、毎年同じ日に、差出人不明のリクエストはがきが届く。消印の地名は毎年バラバラで、去年は北海道、今年は沖縄だった。曲のリクエストは毎年まったく同じ1曲だ。
質問例
- 消印の地名そのものに意味がありますか? → 関係ありません
- はがきが届く日は何かの記念日ですか? → はい
- 差出人はパーソナリティと面識がありますか? → はい
答え
はがきが届く日は、このパーソナリティの番組が初めて放送された記念日だった。差出人は番組の立ち上げに関わった元スタッフで、今は出張の多い仕事をしている。直接電話や対面で祝うのは照れくさく、出張先からでは時間も合わないため、毎年その日にいる土地の郵便局から、番組の第1回で流した曲をリクエストするはがきを送ることにしていた。名前を書かないのは、この曲だけで誰からかすぐに分かるはずだという、ちょっとした洒落っ気からだった。
出題者のコツ
問題文は、一字一句そのまま読み上げる。要約したり言い換えたりすると、本来なら質問で確認できたはずの情報が先に漏れてしまい、答えを当てる過程そのものが台無しになる。多少読みにくい言い回しがあっても、書かれた通りに声に出すのが基本になる。
回答者の質問に詰まったときは、「答えられません」ではなく「関係ありません」に寄せて判断するとゲームが止まらない。「答えられません」は出題者自身も判断がつかないという意味に受け取られやすく、回答者はその質問を宙ぶらりんのまま抱え続けてしまう。一方「関係ありません」であれば、その方向の質問はもう考えなくていいという合図になり、回答者は次の質問に意識を切り替えられる。多少グレーな質問でも、真相に関わらない要素なら思い切って「関係ありません」と答えてしまってよい。
1問にかける時間の目安は、やさしい問題で5分前後、歯ごたえのある問題で10分前後、難問は15分を超えることもある。時間を区切らずに進めると、答えが出ないまま次第に集中力が切れていくので、行き詰まったら適度にヒントを挟みながら、区切りをつけて進めるほうが場は持続する。
声に出して確かめ合う時間
同じ問題でも、出題者が誰か、回答者が誰かによって、真相にたどり着くまでの道のりは毎回変わる。合っていたはずの質問が空振りに終わったり、思いがけない角度からの一言で急に核心へ近づいたりする過程こそ、この遊びが長く遊ばれてきた理由になっている。
推理の手応えを別の形で続けたいなら、会話の中から仲間はずれの1人を見抜くワードウルフのお題80選という選択肢もある。はい・いいえで絞る形式ではなく、一問一答のクイズで場をつなぎたいときは、ドライブクイズ55問が候補になる。
この記事を書いた人
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